2006年04月29日

葉桜の季節

 その前の日が、バレンタインデーだった――。

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「あ……」
 1冊の本を手に持ったまま、みなとは床にぺたんと座り込んだ。彼女の周りには、いくつものダンボールと詰めかけの引っ越し荷物、そしてあたたかすぎる春の陽射し。春というのは、なにかと危険な季節である。ぽかぽかと太陽に暖められてしまうと、ついつい手の動きが止まってしまい、ヘタをすると居眠りをしていたりもする。
 そんなアブない環境で、みなとは引っ越しの準備に大あわてなのであった。みなとはこの4月から、コンピューター関係の会社で働いている。それも大手の西内電機――の子会社である。
 本来なら、4月1日から会社の寮(といっても、会社が借り上げたアパート)に入る予定だったのだが、リフォームに手間取り、ようやく明日10日遅れの入居となったのである。とはいっても、元々荷物は少ないし、すぐに終わるだろうと思っていたものだから、次々と出てくる懐かしいものに手を止め続け……予定した時刻に、荷造りは終わりそうになかった。
「まさか、いまごろ出てくるとは、ねぇ……」
 なつかしそうに、みなとはパラパラとページをめくった。
 文庫本やコミックスが大半を占めるみなとの数少ない蔵書の中で、唯一異彩を放っている、新書サイズのハードカバー。表紙には、胸元で小さく手をふる少女。ちょうど顔のところで、写真は切られている。
 ――この娘は、どんな表情、してるんだろう。
 髪を束ねていたゴムをはずして、みなとはしげしげとその本をみつめた。
 その本は、由紀彦から借りたものだった。
 確か、半年ほど前だった。そのときみなとと由紀彦は、学校の帰りに本屋に立ち寄った。その時に由紀彦が購入した本だった。お気に入りの作家の新刊で、駅までの帰り道で、由紀彦はずいぶんとその作家についてしゃべっていたのを、みなとは覚えている。そのときに、
「今度貸してね」
 とみなとが言ったら、
「じゃあ、貸してやるよ」
 と、由紀彦は買ったばかりのその本を、みなとに手渡したのだった。
 それから半年。借りていたこともすっかり忘れていたこの本が、このタイミングで出てくるなんて……。
 由紀彦は、先月までみなとの同級生だったオトコ。二人の関係は、単なるオトコ友達……だとみなとは思っていた。つい1ヶ月ほど前までは。
 その本を手に取ったまま、みなとはしばらく考えた。
 このままずっと、預かったままにしておくというのが、ひとつ目の選択肢。そして、ちゃんと返すというのが、ふたつ目の選択肢。
「イイワケが、できてしまった……」
 つぶやくと、大きく息を吸って、みなとは手元の携帯電話を手に取った。

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2006年04月17日

マリッジブルー

淡雪の季節は、オトコのマリッジブルーを描きたかった……という記憶が残っています。
マリッジブルーは女性で、男性は結婚前に最後に羽を伸ばして……っていうのが定番のイメージだけど、そうじゃない場合もあるでしょ、と。ま、ワタシにはまったくなかったんですけどね。
描きながら思ったのは、オトコが一皮剥けるのは、こんな瞬間なんじゃないのかなぁ、ということです。
逆に言うと、なんとなーく順調にきちゃったワタシは、こういうチャンスを逃しまくりの甘ちゃんなんじゃないのかな、なんて思ってみたりもして。
posted by omimi at 03:40| Comment(0) | TrackBack(0) | らいなーのーつ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

泡雪の季節


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001 03/22 15:03
from 郁美
Sub おひさぁ〜
ご無沙汰〜。元気にしてる?
あのさー、今度土曜、時間ある?
ヒマだったらさ、久しぶりにごはんでも食べようよ!

 受信したメールを見たとき、「また迷惑メールか」と直感的に思った。削除しようと思って……ようやく隆史は、差出人の名前を思い出した。
「アドレス、消してなかったのか」
 そうつぶやいて、しばらくそのメールを眺めていた。
 郁美は、2年前に分かれた元カノだった。
 高校のひとつ後輩で、6年ほど付き合った。大学時代も遠距離ながら続いたし、隆史がし就職してからは、一緒に暮らし始めた。誰からもそのまま結婚すると思われていて、本人もそのつもりだったのに……結局別れてしまった。
 隆史は、クルマのシートを起こした。営業用ワゴンの薄い屋根を、春先の冷たい雨が打ちつける。ワイパーを止めたままのフロントガラスは、だらだらと流れ落ちる雨水で、前もよく見えない。
 郁美と別れたのは、そういえばこんな日だった。
 きっかけは、白菜の漬物だった。
 その日郁美は、コンビニで買ってきたパックの白菜の漬物を、パックのまま食卓に並べた。共働きだから、コンビニで買うのはいつものことだからいい。でもいままでは、別の皿に移すことぐらいはしていた。それから郁美は、なにも聞かずに白菜にしょう油をドボドボとかけた。――それを見て、隆史はキレてしまった。
「なんでしょう油かけんだよ」
 そう言った隆史に郁美は、
「なんでって……いつもかけてるじゃない」
 キョトンとした顔で答えた。
「オレは、白菜にはしょう油をかけない派なんだよ」
「だって、いつもかけてたじゃない」
「しょう油がなるべくかけてないとこを食ってたんだよ、いままで!」
「いままで平気だったんだから、大丈夫でしょ」
「なんでも自分の都合のいいように解釈するんじゃねーよ」
 それから延々痴話喧嘩を続けて、明け方近くなって郁美が大泣きして……別れることになった。郁美はその日出勤せず、隆史が帰ってくると、郁美の荷物は消えていた。
 いまから考えれば、もうちょっとスマートなやり方ができたのにと、隆史は思う。
 嫌いなモノは嫌いと最初から言えば、なんの問題もなかった。でも最初は、言わないことが愛情だと、思ってってしまった。
「いまなら、どうしてたかな」
 隆史はつぶやいた。
 きっとその場は、なんとかとりつくろえたかもしれない。でもその事件は、きっかけのひとつに過ぎなくて、きっとどこかで破綻したんじゃないかとは思う。けど、いまなら……。
 コンソールの灰皿を引き出して、隆史はタバコに火をつけた。
 タバコ1本分吸い終わるまでの時間悩んで、隆史は「返信」ボタンをクリックした。
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2006年04月16日

シュミ丸出しですみません(^^;

5年くらい前だったと思いますが、ワタシはパソコン教室のセンセをしていました。そのときに、入力練習用のテキストとして、1章だけを描いていたんですが、そのまま放置されていたのがこの作品です。
本来なら、3月の方があっているかもしれないんですけど、2月に合ったネタがなかなかでてこなくて、フライング気味にメルマガに掲載しちゃったのを覚えています。

しかしまぁ、いま読み返しても、シュミ丸出しだよなぁ。
ワタシのシュミはサッカー観戦なんですが、ダービーマッチだの「絶対に負けられない戦い」だの、サッカー関連のワード出まくりだもん。
ま、そーゆー楽しみがないと、やってらんないよね、小説を描くなんて。
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早春賦の季節


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 校舎の隅から、聞きなれた早春譜のメロディーが聞こえてきた。ボクは、ちょっと立ち止まって、耳を澄ます。
「建二、どうかしたのか?」
 ボクの3歩前で足を止めた克哉が言った。
「いや、もうこんな季節なんだなと思って」
 ボクは答えた。
毎年、この時期になると、決まって聞こえてくるメロディー。そのせつないメロディーが、ボクらに卒業が近いことを、実感させる。そして今度は、この歌を歌うのではなく、歌ってもらう番――。
 ボクらの高校は、もともと隣町にある高校の分校だった。
 台風で橋が流れてしまい、隣町までいけなくなって、ボクらの町の学生が集まって、中学校の空いていた教室で授業をはじめた。それがいつしか分校として認められた。
 ボクらの町と隣町は、以前からあまり仲がいいとは言えなかったらしい。だから、分校ができたのをこれ幸いと、「独立運動」が起こった。そして、3月。卒業式を控えて、問題は起こった。卒業式であるからには、校歌を歌うことになる。でも、本校の校歌は歌いたくない。そこで、当時の卒業生たちが選んだのが、「早春譜」だった。
 数年後、正式に本校になって、校歌も定められた。けれどもそれ以来、卒業式には校歌のかわりに、早春譜を歌うのが、慣わしになっている。その「正式な校歌」の作詞・作曲をしたのが、隣町の高校の卒業生だったのもその一因だと、ボクらは聞かされていた。もう50年以上前のことだから、真偽のほどは定かではない。都市伝説の類だろうと思う。でも、それを信じさせてしまう雰囲気はある。
 分校だった時代の名残りだろうか、ボクらの高校では、体育祭も文化祭も隣町の高校と合同で行う。ウチの高校にも、隣町から通っている生徒はいるし、ウチの町から隣町の高校へ通っている生徒もいる。でも、ボクらの高校と隣町の高校の覇権争いは、いままで脈々と続いていた。サッカーでは、同じ都市をホームタウンにするクラブ同士の試合を「ダービーマッチ」と呼ぶれども、ボクらの高校と隣町の高校の闘いは、まさにダービーマッチだった。それはもう、町を上げてのお祭り騒ぎになった。
「今度は送られる番、か」
 克哉がポツリと呟く。
「そうだね」
 ボクは、ふたたび歩き出した。「幸運と呼ぶのは気が引けるけど、ありがたいことだ」
 校舎の外に出ると、北風が肌に突き刺さる。外気は痛いほどに冷たい。まだあちこちに、先週降った雪が残っている。そう、まだまだ季節は冬なのだ。いくら暦の上では、春だとは言っても。
「で、例の計画はどうするんだ?」
 横を歩きながら、克哉が言った。
「やるよ」
 ボクは即答。「だって、最後だからさ」
「確かに、最後だからねぇ」
 克哉は観念したように言った。生徒会長である克哉は、最終的な責任が自分にあることを充分承知している。でも、反論できないことも、ちゃんとわかっているのだ。
 いつだって、そうだった。なにか計画を立てて実行するのは副会長のボクで、克哉の役目はそれを承諾することだけなのだ。
「これから、先方と打ち合わせしてくる。そして明日、こっちの対策会議」
 ボクは、克哉の肩をポンと叩いた。「大丈夫。絶対に勝つから」
「うん」
 珍しく、克哉は力強く頷いた。「最後だからね。勝って終わらなきゃね」
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posted by omimi at 00:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 新年(早春) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月14日

甘酒のウンチク

甘酒って、夏の季語らしいっすね。だから、歳時記と名乗ってる以上、夏に書かねばならんのかもしれんけれど、やっぱり甘酒は冬の風物詩だしねぇ〜。

これを書いたのが、2005年の1月です。
2004年の大晦日から2005年の元日にかけて、大雪が降りました。当時は、こうした時事ネタを織り交ぜつつ、メルマガを発行していたんですねー。

他人の秘密を知ったときって、ドキドキするじゃないですか。で、自分は必至に隠してるんだけど、いつのまにかみんな知ってたりしてね。
そーゆー甘くない現実を、甘酒を題材に描いてみました。……おぉ、キレイにオチがついたぞ(笑)
posted by omimi at 22:43| Comment(0) | TrackBack(1) | らいなーのーつ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

甘酒の季節


 1

「甘酒いかがですか〜」
 声を張り上げるたびに、白い湯気が出て行く。
 元日の午前10時。陽射しはあるけれど、路上に隅には昨日の雪がまだまだ解けずに残っている。
「ひとつちょうだい」
 声がかかると、
「はい、200円です」
 あたしは返事をして、鍋から甘酒をすくって、紙コップに注ぐ。紙コップに保温用の紙を被せて、注文したおじさんに手渡した。
 保温用の紙を被せるのは、スターバックスのパクりだけど、評判は上々だった。どういうルートからかは知らないけれど、この紙にウチの親父は広告を取ってきた。そのおかげで、紙コップを持っても熱くないし、保温性は高まるし、甘酒を値上げしなくて済んだし、言うことなしだ。
 あたしは千夏。ウチは商店街のフツーのそば屋だけど、お正月だけは近所の神社への初詣客を相手に、店頭で甘酒を売ってる。今年でこのバイトも5年目になる。ホントは友達と遊びにいきたいけど、お年玉と引き換えということになってしまっているので、断るわけにもいかない。
 長時間というのは厳しいけど、時給としては悪くないし、なにより休み明けにまとまったお金が手に入るというのが魅力的。ほかのバイトと違って、現金払いだし。
「今年は寒いわねぇ」
 隣の真弓さんが言った。
 今日からは、この真弓さんと一緒に売り子をすることになっている。普段真弓さんは、そば屋のアルバイトなんだけど、今日は甘酒の担当。いつも真弓さんと一緒だから、もう5年目になる。
 あたしが返事をしようと思ったとき、ちょうどお客さんがきて、会話はそこで一時停止。
 昨日の大雪で人出は少ないかと思ったら、すっかりいい天気になってくれたんで、人並みはいつもより多め。しかも寒いこともあって、甘酒の売上げは絶好調。のんびり真弓さんとおしゃべりする暇もなさそうだ。
「ありがとうございました」
 お客さんに甘酒を手渡しながら、人波を見ると、そこに見慣れた顔があった気がした。
 麻里絵だ。間違いない。
 しかも横には、年上の男を連れている。――年上の男!?
 麻里絵はあたしの同級生。ごくごくフツーの、友人の一人。あたしの彼氏がサッカー部で、麻里絵の彼氏もサッカー部ということもあって、ディズニーランドでダブルデートしたこともある。
 でも、いま麻里絵の横にいたのは、高校生じゃない。二十代……それも後半ぐらい。
 別れたってハナシは聞いてないし、そうすると……浮気
 ひょっとしてあたしは、友人の浮気現場を目撃しちゃったの!?
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posted by omimi at 22:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 新年(早春) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月13日

そういえば

柚子湯って、入ったことないんですよねぇ。よく入浴剤では使うけど。
てなことで、柚子湯を入浴剤の『ゆず』で済ますためのオチを考えてたら、こんな話になりましたぁ〜。

こんな感じで、ワタシはラストシーンから話を作っていくことが多いです。ま、最後が決まってるから、収まりのいい話になっちゃうってところが、欠点でもあるんですけど(笑)
posted by omimi at 22:04| Comment(0) | TrackBack(0) | らいなーのーつ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

柚子湯の季節


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 ピピピピピ。ピピピピピ。
 甲高い着信音に気付いたのは、しばらくたってからだった。――普通の着信音ってことは、アドレス帳に登録していない人からの電話か。出なきゃいけないけど、体が動かない。そもそもわたしは、目覚めのいい方じゃない。
 そうこうするうちに、着信音が止まった。のそのそと布団から手を出して、目覚まし時計を手に取る。午前8時。――午前8時!?
 ようやくベッドに入ったのが今朝の5時だから、まだ3時間しか寝てないことになる。
 誰だこんな『早朝』に電話をかけてきたヤローは。
 携帯電話を手に取ろうとして、テーブルの上に目をやって、はっとする。テーブルの上には、いくつものビールの空き缶と、食べかけのお寿司。そうしたあれやこれやの中に、携帯電話が埋もれていた。
 昨日が、父の葬式だった。末期のガンと診断されて、入院して1ヶ月もしないうちに逝ってしまった。とはいっても、この10年アルコール中毒で、苦労ばっかりさせられていただけに、ほっとしたという気持ちの方が強い。
 葬儀の後、参列者にふるまったお寿司の残りをつまみながら、これからの事務手続きをチェックしていた。正直、ろくでもない父親だったけれども、あれやこれや手続きしないといけないということは、それだけ生きていた証があるわけで……なんて思っていたのは最初のうち。ありまに一人で片付けなきゃいけないことが多くて、うんざりしてしまった。
 あれこれ手続きしなきゃいけないということは、夜型のわたしが昼間にやらなきゃいけない仕事が増えるということだ。これ、嫌がらせでしょ、絶対。
 テーブルの上のゴミをさっと片付けて、わたしは携帯を探し出し、画面を確認した。留守番サービスに伝言は入ってないようだ。とすると、間違い電話かイタズラか。なんにせよ、貴重な睡眠時間を奪われたことが腹立たしい。
 今日から仕事に戻るつもりだから、もう一眠りしたほうがいい気もするけど、すっかり目が覚めてしまった気もするし、難しいなぁ……と考えていたころで、また電話が鳴った。素早く電話番号を確認する。さっきと同じ番号だ。わたしはキーを押して、電話に出た。
「もしも……」
『あー、ようやく出たわ。もしもし私。っていってもわかんないかなぁ。私よ』
 わたしがなにか言うより早く、相手がまくし立てた。そこそこ年のいった、女性の声だった。とはいえ、『私』と言われても、さっぱり声に聞き覚えがない。
「あの、どうも、おはようございます……」
 念のため、お仕事モードの声で、様子を探る。男性の声を聞き分けるのは得意中の得意だが、女性の声は自信がない。
『だから、あなたの母親の淑子よ』
「は……はぁ!?」
 その一言で、わたしは完全に目が覚めた。
 わたしの母親は、かれこれ15年前に家を出ていった。外に若い男を作って、家出してしまったのだ。それ以来、音沙汰なしである。わたしが高校に入って、家計を助けるためにアルバイトをはじめたら、今度は父親が働かなくなって、死ぬほど苦労した時期にはまつたく連絡もよこさず、父親の葬儀の翌日に電話をかけてくるなんて!
『そういや、昨日が幸さんのお葬式だったんだってね。連絡があれば、最後くらい顔を見にいけたんだけどねぇ。最後まですずには苦労かけただろうねぇ』
 しみじみ、電話の向こうの母は言った。
「なにぶん急なことだったもので、ご連絡もできずに失礼しました」
 そう言ったものの、わたしは連絡をするつもりはなかったし、そもそも連絡先すら知らない。それ以前に、なんで母は、わたしの電話番号を知っているんだろう?
『ところでさぁ』
 電話の向こうの母は、妙な猫撫でで言った。『幸さん、あなたと一緒に住んでたんだって? ということは部屋がひとつ空いたってことよね。私と一緒に暮らさない?』
「一緒に暮らすって……ここで!?」
 唐突な展開についていけず、なんて言って断ろうかと思っているウチに、
『住所は聞いてるから、今夜にでもいくわ。それじゃあね』
 それだけ言うと、母は電話を切ってしまった。
 わけのわからない展開に、わたしはしばらく呆然としていた。
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posted by omimi at 21:40| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

リメイク!?

えー。この作品はリメイクです。
二十歳(ってーと、もう15年前かぁ〜)の頃、「80Km/hの片想い」というショートストーリーを書きました。A4で1ページだから、原稿用紙4枚分くらいかなぁ。ちょうど槇原敬之にハマってたころで、「80Km/hの気持ち」という曲をモチーフにしたストーリーです。それが思いのほか気に入ったんで、「ビートでいこう!」という短編にリメイクしました。で、それをさらにリメイクしたのが、この「北風の季節」です。
リメイクといっても、元になった作品の原稿がどっかにいってしまったので(古いPCのハードディスクに入ってるんじゃないかと思うけど)、細かいことは不明。というわけで、「冬にオープンカーが出てくる、ちょっと恋愛っぽいストーリー」てなコンセプトはそのままに、新たに書き起こしたのが北風の季節です。
posted by omimi at 02:22| Comment(0) | TrackBack(0) | らいなーのーつ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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